20年ぶりくらいの対人面接
AIが制作現場を席巻し、FigmaやCanvaが当然の制作必須スキルとして求められるようになった世の中で…
私はもう若くない不利な年齢である事は勿論、所持スキルや在宅ワークの限界を感じつつあった。
そして、Indeedで現場の相場感を探していたところ…その求人は私の心を鷲掴みにした。
なんと、うちから自転車で10分の距離にあるスーパーが、広告・マーケティング・クリエイティブ制作の経験者、販促の力添えを探しているではないか。
しかも、一週間に3日〜OK、1日につき4時間就業OKと、副業し放題である。
正に灯台元暗しだ。
私は早速応募した。
地方だから、当然そんな都合の良い人材もいないのであろう、「履歴書を持参してください」からの店長面接までがトントンと進み、応募してから10日以内に行われた。
そして私は20年ぶりの対人面接だと意気込み、自己紹介や自己PR、応募の動機などよく面接時に尋ねられる項目を予めまとめ、復唱して挑んだのである…
ところが。
そもそも面談の連絡までに所要一時間とは言われ「そんなにかかるものなのか?」と不思議に思っていたものではあった。
不穏な予感は当たり始めた。
「始めの30分間は、こちらの質問事項に答えておいてください」と紙を二種類渡された。
しっかりデザインとプリントをされていて、これはこのスーパーマーケットのグループで面接時に行われているフォーマットであることは明らかだった。
A4片面一枚のほうは、
「就きたい業務」と「就きたくない業務(と、その理由)」だった。
私はそれを見て、求人は釣り求人だったのか…と思い始めた。私は販促部門に応募したのに、これは明らかに違う部署に回される可能性を指しているものだった。
また、「確定している就業可能な時間帯」と「幅を取って対応可能な就業時間帯」を書かされる項目もあった。
そこで私は12-16時を確定している時間帯、10-17時を要相談で書いた。
別の方の質問票つきのほうは、「あなたが過ごしている普段の考えかたとして当てはまるものを選んでください」「はい、どちらでもない、いいえ」を選択するよう示されている90質問もある回答用紙だった。
なるべく「はい」または「いいえ」で答えるよう示されていた。
内容的には、6割が「和をもって人と過ごすことができるか」対人スキルを問うもので、
3割が「他人、特に目上の者や役職者の指図を聞き入れられるか」
残りの1割が「我を曲げず強く主張して来るタイプかどうか」を探る質問だった。
感じ良く要約すれば「接客の適正があるかどうか、素直で温和なタイプであるかどうか」
感じ悪く要約すると「奴隷の適正があるか、反抗はしないか」
を調べる質問票のように感じた。
さて、30分がたち、店長と販促部門主任の三者面接が開始された。
あんなに面接質問例を復唱しておいたのに、結局のところ一切必要がなかった。
店長は開口一番、私の履歴書で一番気になったであろうところ…3回の転職歴の理由を尋ねてきた。
それは、誰が聴いても「なるほどね」という、前職の悪口でも何でもない納得のいく理由を返せたと思う。
すると今度は、店長が一番言いたいこと…本命であろう、求人票にも載せなかった後出しの隠し事(私からすると)を切り出してきた。
「うちは所属部署、業務内容に変更が出たりするんですよ。それはOKですか?」
…きた。これが、釣り求人の正体か。
「基本的には募集したこの業務を担当していただくのですが、うちは皆で一丸となって店を作っている、という感じなので皆さんもそうなのですが、他にも営業にまつわる色んな事をしていただきます」
それから店長は今度は私の就業希望時間帯をあらためはじめた。
そして、確定時間帯の項目を早々に飛ばし、幅をとった長い時間帯、10-17時の方を読み上げ始めたのでギョッとなった。
しかしそのまま続けて、社会保険はどうするのかと尋ね始めたので、すぐさま私は扶養内でお願いしたいと言うと、
「では10-14時も可能なのか」と尋ねてきた。
求人票ではご都合に合わせます♪とか書いておいて結局それだ。何としても少しでも店側有利に寄せていこうとする。
また、私にガツガツやらせたい気でもあるのか「言わなくてもいいんですが」と前置きしつつ、何か持病などを持っているのかということを尋ねてきた。
そこで私は、過去に実家の家じまいをして熱中症で運ばれて以降、あまり体力を使うようなことが出来なくなり…と、さてこれを皮切りに体力仕事はお断りの伏線を張るぞ!というつもりで説明を続けようとしたが、店長は言葉をかぶせるように熱中症への処置はこうするべき、危険なので気をつけましょう、まあ終わってしまったことなので今更ですがなどとこちらの事情も聴かずに一方的に捲し立てられ、私は心の中でポカンとなった。
話を聴かないわ、店側の都合を後出しでドンドン飲ませてこようとするわ、この店長は曲者だと感じた。
思えば、販促主任も店長の顔色をみて終始ソワソワしている。この店舗の問題がこの店長を通して薄々見えてきてしまうようだった。
そして次に販促主任のほうの、実際どんな業務なのか質問の場になった。
私はExcelの関数などは全く使えないといっていいほどなので、そこを心配しているというテイで、どんな流れになるのか尋ねた。
すると、こちらでほぼデザインできる事は何もない。
本部から決まったポップが送られて来るので、印刷して所定の場所に貼ることと、手描きも全くないわけではないがドンキのように多いわけではない。
LINEなどで各店舗独自のセールスがあればそこでデザインは必要になる可能性はある。
しかしPhotoshopは無い。
出番が多いのはパワーポイント。
…と、なぜ、広告デザイン制作会社経験有の人間を求めた?と不思議になるような言葉ばかりが出てきた。
…私はとりあえず、ここが仮に採用となったとして、最早デザイン業務は期待出来ないと感じた。
身体を動かさなさすぎる日々も人と関わらなすぎる日々も問題があるから、まともな社会生活への訓練感覚で仕事はしてもいいけれど、極力時間を提供したくもないし、お互いの都合が擦り合わないならもうそれでいいや位の感覚。
そして最後まで店長はあくまで店側があなたを採用するか決める、という強硬な姿勢だった。
「採用の可否は2-3日で電話または郵送をします」と言った。
募集要項はハリボテなのになぜそこまで強い姿勢で出られるのか理解に苦しむ。
関連して、35年近く前の、学生時代のバイト先のスーパーのことも思い出した。
あの時もそういえば、前に出るのが苦手な私はレジを避けて品出し部門に応募したはずなのに、結果としてレジやサービスカウンターに入れられ、なんなら店内放送までさせられる始末だった。
スーパーというものは常に色んな部門が人手不足でそういうものなのかもしれないが、やっぱり騙し討ちされた!という感覚が払拭できない。
今回のここもどうせ、子どものいる家庭を優先して日曜日はママを休ませてあげて!あなたは子どもがいないんだから出勤して!という圧を喰らう予感がする…
…あれ、例え採用と言われたとしてもこれ断った方がいいのかな。

