苦行な39日目

朝、ベランダに鳩が来たので追いたてていると、母が「何をしているの」と気にするので説明する。
すると、若い頃に住んでいた実家の二階によく鳩が来ていてフンで汚されるのでホウキで追いたてた事が面白かっただなんて事をすらすら言い出したので、お、ちょっと今日は調子がいいのかもなんて思っていた。

けど、ちょっと時間を置いたあと、出入り口の襖を開けてダイニングをじっと眺めこんでいるから「どうしたの」と声をかけると、「あっちの襖は押入れよね、こっちの襖もそうかと思って」と言い出す。

またしばらくすると今度は、「なんかこう、鳩とミックスすると美味しいジュースは出来無いかしら」などと言い出した(ギャグではない)。
昔の記憶が呼び覚まされると、その後の記憶がめちゃくちゃになるのだろうか。

いつものように8時には朝食を済ませるが、9時過ぎにはもうご飯を欲しがり、「ご飯くださーい」「朝ご飯くださーい」とベッドから叫ばれる。

ベッドから見える範囲に洗濯物を干すとベランダに出られて転倒される恐れがあるから、見えない位置に干していた。でもここは、強風だとダイニングから洗濯物の端がチラチラと見えてしまう位置でもある。
また目ざとく見つけられた。ベランダに出ようとするのを止める。なぜこうも、対処をしたらまた別の所から何としてでも乗り越えてこようとするのだろう。

お昼を食べてわりとすぐ、12:30には、また余所行きの格好をする。でも嫌な予感がしてよくよく話を聞くと…実家に帰りたい、と言う。やっぱりか。

要約すると、私がソッポを向いていて自分と向き合ってくれない(母に背を向けて家事をしていたり、スマホを覗き込んでいることから)。
いつもそばにいてマッサージをしてくれたり優しくお世話をしてくれない。
お菓子を食べたいだけ食べさせてくれない。
家事をしたくても混乱して思うようにできないし、やらせてもらえない。
ただ閉じ込められている感じがする。
実家に帰ればお母さん(祖母)に優しくしてもらえるから帰りたい。

まあ、この内容の一部はぼちぼちこの一ヶ月、言われていたが一気に吹き出した感じだ。

いくら、今日は誰も迎えに来ない事を説明しても通用しない。帰りたい気持ちになったら帰れる気でいるのだ。
そんなでお出かけ支度が無意味である事を指摘しているうち…

「あなたのことは敵か味方かもわからなくなっちゃったわね」と言われる。
「私がトイレ入ったら、死ぬまで閉じ込めたりしない?」と訊いてくる。

母の余所行きパンツのポケットから、私が35年前の10歳ちょっとの時位の母の日にあげたポケットミラーが見えて泣けてきてしまった。泣きながら思わず母に、「その、鏡、35年前に私があげたこと、覚えてないよね?」と訊く。母はなんともいえない表情で「ごめんなさい、覚えてないわ」と言うと、バツが悪いのかいつも通りなのかは不明だが「トイレに行くわね」と言って立っていった。

入浴介助ヘルパーさんが15:15頃来た。
今までで一番夕暮れ症候群?が強くなっている事をサッと説明。
母は相変わらず頑として入浴にうんといわない。
ヘルパーさん達は、病院というキーワードを出すと比較的母が言う事をきくことから、お医者さんが検査するから清潔にさせてくださいと頼まれた、という説明をしている。それでも首を傾げている。お医者さんにおこられてしまうんです!お願いします!協力してください!せめて手をあっためるだけ!で、なんとか「うーん…それなら…」となったのですかさず居間に母を座らせたままダイニングテーブルの上に湯を張った桶を用意。

ヘルパーさんがお湯の中で母の手をマッサージしてくれる。なんでも褒めて持ち上げ。母、わりと気分は良いようでおとなしい。
それに乗じてもう一人のヘルパーさんがホットタオルを首に当ててマッサージ。からの、頭にもタオルを当てていき、ドライシャンプーをタオルにつけて気付かれないよう頭をクリアにしていく。

そうやりながら足湯に移行。
洗面器にお湯を汲み、母は最初は抵抗していたがしぶしぶ足をつけた。つけたところで洗っていってもらう。
少し足湯で温めたところで、切れる範囲の爪を切ってもらった。本当は資格が無いと、厚い爪や爪に病気のある人の爪切りはしてはならないらしい。母は厚く、変形した足指。

でもなんとか少しでも切ってもらえたのは助かった。

ヘルパーさんが帰ったあと、しばらく混乱してさっきの人達がご飯が欲しいと言って戻ってきたらどうしよう、だのもてなしが出来ないだの言っている。

まあ要約するともうお腹がすいてきていて、他人に食わせる飯まで考える余地無し!というところか。17:30に夕食にするからねと言ってもその場は納得するが10分も経たないうちに起き上がってきて催促してくる。
しまいには、もう自分が食べる事を決めちゃったみたいで、「お腹が空いたからもう私はご飯食べるけど、」と無意味な主張をしてくる。

「さっきの人は、なんで逆の事をニコニコしながらサラッと言ってくるのかしら」と言う母。
「逆の事?ああ、嘘をついてるってことね」
うなづく母。ヘルパーさん達のおだてはバレているようだ。ああいうのを感じ取るから、他所の人に不信を持つんだろうな。

17時になったのでまあいいだろうと夕食準備をし始めると、横からわいわい言い出す。ウンザリしてきて、「もう疲れちゃった、疲れちゃったよ…」と言うと、何か効いたのかしばらくベッドから出てこなくなった。

今日は特に症状が強く出ていて、また久しぶりに心底疲れて夜の買い出しにすぐに出掛けられなかった。

今日は、かなり強風だったんだけど、もしかして母がおかしくなる日と関係あるかな?
私自身、気圧変化の時とかは頭痛になりやすいし気分が上下しやすい気がしている。今度から強風の日をチェックしてみよう。

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