激怒な46日目

今日も午前は安定していたが、13:30にココアをあげた時からおかしくなっていた。
大好きなココアをあげたからおとなしく飲んでくれていると思い洗濯や片付け物などをしていたら、何かゴソゴソ母の影。

手元を見たら、野菜室から持ち出したオクラ2本を持っている。「それどうするの?」と訊くが生返事でまな板の上におき、包丁でヘタを落とした。そしてそれをそのままココアの入ったマグに投入。
「え、変わった事するね。そんな飲み方する人見た事ないよ」と言ってみるが、生返事のまま、ココアを飲み始めた。もう知らね、と思って放っておいた。後で見たらオクラは影形なかったので、どうやら生のまま食べたっぽい。
言葉をかけても通じない感じ。具合がおかしい兆候だ。

時間が経つにつれ、より奇行が目立ってくる。
パジャマを脱いで肌着1枚になりその上にブラを着けて現れた。
「あれ、肌着の上からするんだ」
「おかしい?」
「いや…お好みでどうぞ」
なんだかよくわからない笑みを残してベッドに戻る母。
とりあえず出掛け支度っぽくなってきたのはあまりよくない兆候だ。

帰る、とはまだハッキリ口に出さないがお母さんお母さんって祖母の話をしだしたので帰宅願望が募り始めていると感じた。
そこで、母が赤ちゃん時代の兄を抱えて実家で写っている白黒写真アルバムを見せる。
覚えているか覚えていないか微妙な反応で、祖母の写真を自分の親と認めない。

「みんな大きく育ったのね。なんだか嫌なものを見ちゃった」
と言い、アルバムを置いてテーブルに突っ伏した。
こんな古そうな時代の写真ですでに自分の親が老いているのに生きているわけがないと悟ったのか、思い描いていた実家と違ったので気落ちしたのかはわからない。
認めたくない現実が帰宅願望に水を差したのは間違いなさそうだ。

不安なまま午後の入浴介助ヘルパーさん達が来た。
もう今日は最初から拒絶モードにしっかり入ってしまっている。
しかもなんだか勘違いをしている。
「私たちが実家に帰るという事をこの人達に説明した?」
なんだか私のことを同胞のような、味方のような、でも上から目線でまるで従者みたいに話してくる母。

私「帰るために頼んだんじゃないよ。清潔にしてもらうプロを頼んだんだよ」
ヘルパーさん「実家に帰るならその前にシャワーで綺麗にしてからのほうがいいね」
母「必要ないから。実家でお風呂入れてもらってお母さんに綺麗にしてもらうから」
私に裏切られたような顔をして、「あんたが余計な事を言うから」と苦々しく吐き捨てる母。

ヘルパーさんと母の間で押し問答を20分程。頑として聞き入れない。ヘルパーさん二人に対面して座り抵抗する形だが、時々首だけこちらを向いて援護射撃を求めるような目線を送ってくる。

私は母の背後でジワジワ死角に身体を移動させていって、母の目線を投げさせない位置取りをしていった。

母「綺麗にするっていうなら、娘をしてやってくださいよ。私は頼んでませんから」
私「私は自分で出来るし朝入ったから」
母「私だって必要な時は自分で洗えます」
その言葉尻を捉えてヘルパーさんが「じゃ、今やってみていただきましょう」と強引に清拭のための温タオルの用意をする。

先週同様手を洗面器に付けさせ、同時に髪を触り始めたら母が半泣き声で「やめて!やめてくださいよぉ!嫌だって言ってるのにぃ!」と悲鳴をあげた。
続けて怒声で「私は具合が悪いんです。入浴なんかしたら、倒れますよ。どうしてくれるんですか」
ヘルパーさん「だから、入浴はもうしませんって。拭くだけ、ちょっと手や足をお湯に浸けるだけですってば。倒れないし、気持ちいいでしょ」
母「それは、まあ、気持ちが良いかもしれないけど、嫌です、嫌なんですうわああ…」

ヘルパーさん達が強引に父との出会いについて雑談を振ったりして話を逸らしている。
私は母から見えない角度で待機。

なんとか手をお湯につけて、足湯をしてもらってベビーオイルを塗ってもらったようだ。
終わった母はしょぼくれながら少し笑顔を見せた。無理矢理のお愛想かもしれないが。

その後ヘルパーさんらが今日の記録帳をつけている間に、母は洋服を着替えてきた。着替えるということはまだまだ帰宅願望に囚われているはずである。
でもそれには触れないよう、オシャレーとか褒めそやすヘルパーさんと私。

ヘルパーさんが帰った後、「よく頑張ったね」と声をかけたら、母は「嫌なのよ本当に…」とボソッと言った。

その後はうっかり夕食を3品+カレイの煮付け作り始めてしまったものだから、母の夕食クレクレ要求が厳しかった。入浴拒否でイライラしてたものだから、その上即食べたい時に食べさせてはもらえず、でも調理は目の前でされて、正におあずけ状態。

「夕食は本当は18時なのを、どうしてもお腹が空くからって17:30にしてあげてるんだよ!お医者さんから決まった時間に食べなさいって言われてるんだよ」
ろくすっぽ聞きゃあしない。
「ご飯をよそってもいいわよね?」
「じゃあ、おかずも欲しいって言わないね?それならご飯だけもう食べたらいいよ」
「そんな意地悪を言わないで…」

ずっと優しい態度で来たもんだから舐められてきているように思うので(入浴介助の時の従者扱いとか)今日は厳しくいった。

食事の用意権を握る私が強気で出た上、調理も私、片付けも私。
家事しなきゃコンプレックスの母にとっては何も言い返せない状態。
しおらしく夕食は終わった。その後もいつもの日常に戻ったかと思えた。
私もかなりイラついていたので、夕食時からあまり母と目を合わさなかったし、片付け後はさっさと消灯してしばらく買い物に出掛けてきた。

帰ってくるといつものように消えた私を気にしながらこまめにトイレに起きてくる痕跡(スリッパの向き)があった。

夜用パッドをつけるとこまではおとなしかった。
私も21時には布団に入ってこっそりスマホをいじりだした。
そして22:30…母の怒りに満ちた声が真っ暗な部屋の中響いた。
「ちょっと、起きてる?」
「なあに…(わざと眠そうに)」
「トイレ行った?」
「?行ってないよ」

今思えばこの返事がいけなかった。
「そこで寝ていた二人の男の子はどこにいる!」
「へ?いないよ、ずっと」
「おかしい、そんなはずはない。ずっと一緒に寝ていたじゃない」
「やだちょっと、怖い事言わないでよ…いないよ。本当にいたの?なら、どこに行ったんだろうね?」

突如。
「おねしょして布団を濡らしたってどういうことなの!高いお金払わさられるんだよ!お金は持ってないよ!全く!どうするの!」
「?!?!おねしょしてないよ。若い人はおねしょしないんだよ」
全然聞きゃしない。どんどん勝手に怒っていく。
もう、ここから私は貝になる。
暗闇でひとしきりブツブツ言ってる母。
「全くどうしてくれるんだ!ひっぱたいてやりたい!」

こういうのって自分のミス(おねしょする不安)の転嫁なのかな。面倒くさいプライドだ。

23時くらいに、起き出す母。
見づらいように灯りという灯りは真っ暗にしてやってたのに突破され、トイレに行かれた。パッドどうせずれたんだろうな…
しかしなんで脱出したりとか、自分の欲に突き進む事に関しては能力に長けてるんだろう?動物の勘みたいになつてるんだろうか。

戻ってきた母にパッド直させて、と灯りをつけて寄っていったら若干の抵抗がみられた。
「ちゃんと出来てるから!」
「じゃあ、念のため確認させてね。これ難しいオムツだからどんな人でもうまくつけられないのよ。◯◯さんが出来ないとかじゃないのよ。…あ、ほら、はずれてる。でもこれつけるの難しいから◯◯さんのせいじゃないよ」

相手のプライドに配慮した物言い。
ほんとプライド凹ましてやりたい(笑)
仕事関係で、プライド高くて振り回してくる大勢の人々に渋々付き合わされて来たから、もうアレルギー状態でこちらもイライラしてくる。
仕事だったら、もうこれで切れる関係だからいいやって関係になった途端に雑な扱いをして切ってきた。でも母となるとそうはいかない…

パッドを直し、ベッドから離れる際にちょっと「眠りたい夜中なのに起こされた私」として辛そうにヨロケる演技をしてみせた。
それが効いたのか何が効いたのかわからないが、その後は30分位は静まり返った。

でもやがてカーテンをシャッシャッと開ける音…
(窓を止めるやつを取り付けたのでもう開けられる心配はないだろう)

日中もしっかり起きてるのに、夜も爛々と起きている。
本当にどうなってるんだろう。
2/25に同居開始し始めた日なんて、一回も目覚めずに18時から7時過ぎまで寝てたのに。
この先が怖い。全く眠らなくなって、私もまた不眠になるんじゃないかって。

母が時々カチャカチャ言わせるものの比較的静かになり、私もいつしか寝てしまった。0:30くらい。

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