半休みの56日目

朝起きた時に、母がまた体を起こせなかったらどうしよう、とドキドキしていたが、立ち上がりは出来ないものの傾斜をつけて補助すればベッドの縁に腰を掛けることはできたのでホッとする。

今日はショートステイの日だからパジャマには着替えさせずに普段着に着替えてもらう。
タートルネックを着させたらなかなか首が出てこないで、やっと出せた時に「ばあ!」とおどけたので調子が良いみたいだ。

キッチンには到底来られないから、ベッドに朝食を運んだ。
いつものように完食。今日は鬱々としていないので少し体調も良いようだ。

その後のトイレは一人で歩いていけるようになっていたから、これもひとまず安心。痛い所があるか訊くと、特別には無いという。大きな進歩だ。でも、昨日の点滴の痛み止めがまだ効いているだけかもしれないので油断はできない。

10時におやつのプリンをあげたけど思いの外甘い味で無かったみたいで、大喜びはしなかった。
11時にはココア。こちらは大喜び。とりあえず甘ければ美味しいらしい。
ココアを飲む時に髪をとかして、肩、背中を7分ほどマッサージした。気持ちが良いと言って喜ぶが2度めに言われた「もういいわよ」には「疲れた」の色が見えたから止める。
何度も、「12時にお昼ごはんだからね」と言ってみせる。
こちらから積極的に、昼食を出しますよという意思を見せないと安心しないように思う。
あとは、母がトイレの帰りにキッチンに立ち寄る時に何かを提供できたり、ダイニングに着いている時にはTVを付けたりできればなんとなく間がもつというか気分転換にはなっているみたいだ。

午前中、私は亡兄の部屋を片付けていたが、母が好きそうな紫色と銀糸で包んだ貝の飾りの根付が出てきたから、後であげようと取りわけておいた。

宅配弁当が来たので12時に出す。
食べ終えた頃に先程の根付を渡すとかなり気に入ったようで、メガネにつけてみたり、耳に掛けてみたりと、おどけだした。珍しい。
かなりご機嫌のようである。
このテンションが午後もずっと続いてくれたら良いんだけど、今日は13:30にショートステイの人と立会いのケアマネさんが来てくれた。

今日はそこそこ動ける感じなので急いで外出着に着替えさせ、玄関先でショートステイの人に頼む。デイと違って玄関先まで迎えに来てくれるのは本当に楽。

ショートの人と母を見送った後、ケアマネさんと少し話をした。
昨日の緊急搬送先で母の症状に困惑したこと。午前は天使みたいだが午後の対応がどうしていいかわからないこと。

すると、「施設を探します」と言ってくれた。
ただ、最大の問題…「緊急連絡先はホームにすぐ駆けつけられる距離に住所が無いといけない」である。
これ、どの程度厳密でないといけないのかがわからない。
「住民票が無いとダメ?」「契約時には近くに住んでても、もしも遠くに引っ越したらどうなるの?」

近県に義実家があり、そちらであれば都内よりは費用が安いんじゃないかという話をしてみる。
義実家には以前からよく行ってて、そういう話になったらOKをもらえると思います、という言い方で曖昧に話す。
すると、ではそちらの県内で探してみましょうという話になり、お願いしますと頼んだ。
介護業界の人たちの「ものは言いよう」をこれまで見てきたし、こちらとしてもバカ正直になる場じゃないかな、となんとなく思ってる。

意外なことに、「なるべくもう、お家に帰らない方向で、ショートなどで繋いで入所という形にしたほうがいいですよね」と言ってもらえる。
「はい」と答えると、ケアマネさんは帰っていった。

あんなに、母の認知症状や対応の解らない看護で苦しんで、もういやだ!と思って来たはずなのに、あっさり介護をしなくていいという話になってくると、なぜだか罪悪感と一抹の寂しさが一挙に湧いてくる。
午前は天使なんだし、頑張ればもっといけるんじゃないの?とか、すごく自問自答をしてしまう。
だけど、この賃貸を維持した上で父施設とたまのショートステイやサービス費…となると、経済的に破綻するのは目に見えていると思い直す。

そうだ、ここに来る前にあんなにはっきりと決めておいたじゃないか。
「母の要介護度3を目処に施設に頼む」「賃貸を引き払って施設代✕2のほうが固定費がかからないなら、そうする」

なんでこんなに罪悪感がすごいんだろう。

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