最後の終日介護69日目

6時半くらいに様子を見に行くと、母は目を開けていた。
今日も母は自分の生存確認と、「またあなたに会えて嬉しい」と言った。
「私もだよ」と言うと微笑む母。

オムツ交換は出来たがパジャマの上、肌着の上は難しかった。脱いで、と頼んでも「脱ぎ方がわからない」と言って無気力にだらんとしている。
本当にわからないのか、怠くてやりたくないのか、甘えているのかはわからないがとにかく動かない。
仕方ないので私が脱ぎ着させたがこれ、もう完全に要介護度上がってるよな…

今日はそれなりにベッドに傾斜を付けさせてもらえたから、朝食準備。
朝食を食べてもらうために今までの状況から考えて試したこと。
・私の作るおかずがもしかして飽きられている可能性があるので副菜は惣菜
・おじやなど柔らか食中心、メインはカレイの煮付け。
・どれが食べられてどれが食べられなくてもいいようにメイン、おかず合わせて5品。

結果、6割程度は食べてもらえたと思う。
わかったことは、
・酢の物が苦手になってきている
・汁気の多いものばかり選ぶが、野菜の煮物なら大丈夫
・食材そのものの味だけではダメ、出汁など味気がついてないとダメ

それで、箸があまり使えなくなってきて、スプーンに頼りがちになった。
スプーンで運ぶのもしんどいらしく時間がかかり、途中からは私が口に運んで食べさせる。

判明してきたところで、もう今日が最後のお世話なんだよな…
他所だと、食事の見守りはされるけどだいたい自分で食べられるらしいから、家だと衰える速度が激しくなる。

食事が終わってベッドの傾斜を浅くした途端に軽くいびきをかいて寝始めた。
食事だけで疲れるのだろうか?

寝ている間に、明日からのショートのための持ち物を準備。

11時にお茶伺いをすると飲みたいというので、ホット麦茶と饅頭をあげる。どちらも喜んで平らげ。

13時にお昼。うちでの飲食を拒むようになってから、家では初めての昼だ。よそだと完食だという…
ベッドの傾斜は付けられても、やっぱりベッドの縁は座れなかった。寄りかかって食べ始める。
でも、なかなかの食い付きだ。高齢者用弁当というのがやはり効いているのだろうか?
おかずのひとつ、味付けもずくはやっぱり残した。やはり、酢があまり喜ばなくなっている。
でも9割がた食べることが出来た。

食後はうつらうつらとしている様子だったので隣の部屋に私は引っ込んでいたが、何か音がするので覗くとベッドから立ち上がろうとして立てない母がいた。
「立てない。立たせて…」
両手をとって、1、2の3でひっぱり起こす。畳がつるつる滑って立ちにくそうだがどうしようもない。
すごく時間をかけて少しずつ歩行補助をし、トイレに行った。
トイレでも母はリハパンを思うように脱げなくなっていて、便座に腰をかけるのも難しくなっていたから、私がリハパンをおろし、補助手すりをしっかり捕まってもらって便座になんとか座らせた。

このトイレのやり方で、1時間に1回位のトイレ通い介助。

母が自分ひとりで出来なくなっているような内容はわかってきたから、あんまり繰り返してたらこちらも慣れて、スムーズになってきた。

母も午後遅くなるにつれ、体力が回復してきたのかベッドから一人で起き上がる事が出来るようになってきた。でも治ったわけじゃないんだよなぁ…

ベッドでカチャ、と小さな音がするたび隣の部屋からすっ飛んでヘルプしたのと、おやつのプリンや温かいお茶をこちらから声かけで勧めたせいか、たいへんリラックスした表情で母は言った。
「今日もなんて素晴らしい日なんだろう」
午後の悪魔なんかどこか吹っ飛んでいる。全く苛々しない。そうか、今までは私の気遣いが足りなかったのか…

けれど、今日が最後と思うからこそこんなに気にかけて直ぐにすっ飛んでいけたのであって、これが延々と日々続くとなると難しい。昼食直後から、私はずっと隣の部屋で母の物音スタンバイだ。
16時半までそんな感じで、それ以降は夕食調理を始めながら母の様子を見に行く。

最後の日だと思うから頑張れた。

ショートから明日の迎えに来る時間の連絡が来ないなーと思っていたら、17時位にきた。午前か午後かを選ばせてくれたから、ちょっと迷って、午前、と頼む。昼の宅配弁当を中止してしまっていたのと、もう母の食事の好き嫌いに付いてけなくて調理負担がしんどいからだ。

10時半と聞かされたので直後に約束通りケアマネさんに連絡するが、10時から他所のお宅に訪問予定が入ってしまっていて、9時半なら着替えを手伝うと言ってくれる。後はショートの人に頼んで玄関先からはお願い出来るよう手配してくれると言う。

しかしそれだと、肝心のベッドから立ち上がり、玄関まで歩かせる事が私に出来るかが難しいので「ショートの方にはベッドそばまで依頼することはできるでしょうか?」と尋ねると、返信にしばらく間があり「11時半迎えにしてもらいました。11時に自分が行きます」と返信が来た。

これなら、一応すっぽかされなそう…かな?
もう、ケアマネさんに来ていただいて直接手を借りるのはこれが最後だろうから頑張って調整してくれたのかな?

夕食の母は自分からベッドの縁に座り、すごい勢いで食べ終えた。「お腹が空いていた?」と訊くと、ウンウンとうなづく母。そういえば意外に、調子が変わってからはご飯食べさせてくださーい!と急き立ててこないな。

食後は眠そうな顔をしているから、夜の支度をして寝させた。

あんなに恐れていたフル一日対応の最後の日が終了した。でもさすがに、ずっとずっと気を配っていたので神経が擦り切れる。本人は満足そうだったが。

今日はこどもの日だったけど、こどもが頑張る日かな?と少し思った。

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