隣人の怖い依頼

夜22時頃、隣室の独居の60代前後男性がチャイムを鳴らしてきた。
こんな時間に何事だ…と言いながら家族が対応。

なんかすっだもんだ、ドタバタしている。
ひとしきり終わったようなので聴いてみると…

隣の人は職場に家の鍵を置いて帰宅してしまい、入れないのでウチに来て「ベランダから隣へ入らせてほしい」と頼んできたそうだ。
ベランダは非常時に破れる壁が隣との境にあって、壁の下に大きく隙間が35cmくらい開いている。
かがんで腹ばいのようになれば、大人でも通れるくらいだ。
そこから自宅に入りたいらしい。留守にしててもベランダ戸の鍵は掛けていない模様。

だけどたいして知りもしない、月イチ程度の挨拶相手をウチにはいれたくない!ので家族が渋ると…
「自分ちにはいって中から鍵を開けてほしい」と頼んできたそうだ。

交渉術ドア・イン・ザ・フェイスか?!

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックとは、本命の要求を通すために、まず過大な要求を提示し、相手に断られたら小さな(本命の)要求を出す方法。
人間心理を利用した交渉テクニックの1つ。 一般に人間には、借りができると、そのままでは気持ちが悪いため、お返しをしなくてはならないと考える傾向がある(返報性の心理)。

なにせ地方都市の、どこで誰が繋がっているともしれない人間関係、「あそこの家は困っている時に助けてくれなかった」などと噂されてイジメの元になっても大変である。
さすがに、中から鍵を開ける事は了承してしまった家族。
新型コロナで他人と極力密接関係にならないようにしていたのに、ここに来て相手の巣に入るだなんて大きな失態だと愚痴る。

後でベランダを行き来された台所の電灯を見ると、暗い中開けられたため小虫が入り込んでしまっていた。
置いてあるフライパンにも羽虫が飛び込んで死んでいる。あぁ…
夏なので窓は今、小虫がびっしり貼り付いて、その虫を狙って蜘蛛が巣を毎晩かけてくる。
とっさの依頼ごとでそんな場所を行き来されたものだから窓汚れが落ちてめちゃめちゃである。最悪。

そして後で考えると、これは明朝も「鍵がないので中から締めてほしい」とか言い出さないか?ということ。
予備鍵があれば良いが、面倒がって他人にすぐ依頼してくるような人が、“予備鍵さがすのも面倒くさい(or しまった場所を忘れた)”と思うとも限らない。
翌朝は早めに洗濯して音を静かにさせ、居留守を使うことにした。

しかし、隣人が「ベランダの非常口の下はくぐれる」という認識を持っていて、「鍵を忘れたら通らせてもらえばいい」と安直な発想でいるという事を知り、恐怖を感じた。
出かける時だけはベランダの戸に鍵をかけていたが、今後は在宅中も常時鍵を掛けないと怖いなと思った。
独身男性だから怖いというのもより拍車をかけているし、私はここ近年60代以降くらいの男性からは馬っ気丸出しで接近されがちなので懸念ごとからは遠のきたい。

翌日談

朝は8時までに2回洗濯を済ませ、静かにしていたが どちらにしても訪問は無かった。

夜19時くらいに隣の住人がお礼と言ってビールを持ってきたようだったが、ドアも開けずに家族は「いいです!いいです!」と強く押し切って断っていた。
ここでお礼を受け取ってしまったら、「また次もやってしまっても頼みやすい」とも受け取られかねない。

この地方都市では、人間関係と上手な距離感のさじ加減が難しい。
何しろ新型コロナ感染者関連で、陰湿ないじめをいくつも聞いている。ここはそういうところなのだ。

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