母に猫のぬいぐるみを持っていく

ここ最近、義実家でTVを始終点けているせいか、認知症やその介護のニュースがやたら目に耳に飛び込んでくる。

それだけ、介護が今注目されているか、それとも私のアンテナが認知症に敏感になっているのか。

「強い態度で接しない」やセラピー的な対応をよく取り上げられているが、私も思いついた。
そういや、TV番組は興味なくなっていっても、動物の出てくる番組はわりと目で追ってたな…
猫のぬいぐるみを持ってってみたらどうだろう?

施設の談話室に飾られていた、モンスターズインクのマイクのぬいぐるみが母の個室に移動されてきて手を乗せる台かわり?にされていたり、使われない時は飾られていたけど、あのキャラクターは可愛いというよりも昔の人にとっては1つ目の怖い妖怪だろう。
それより可愛いネコチャンの方がいいだろう。

amazonで、「 リアル 猫 ぬいぐるみ 」で探し、日本製を売りにしていてレビューが高評価のものを見つけた。まあ値段も相応に高級だけどここはケチる所じゃない。
ポチったら翌日には送ってくれた。
まあまあ商品画像通りの出来で、たしかにパッと見た目は本当の猫がいるみたいだ。
なかなか良い。

さっそく翌日施設に持っていった。

またもうっかり昼食も終わりの時間帯に来てしまい、母はごはんを食べさせられた直後だった。
車椅子から体がかしいで、ぐんにゃり左側に体が倒れかけて座っている。
もう、垂直には体が自立して座っていられなくなってきているようだ。

介護士さん達が珍しく5人くらいも母が付いているテーブルに取り囲むように集まっていた。
どうやったら上手に完食させられるか?を研究しているっぽい。
私が来たのを見て、母を個室に移動してくれた。
それから、先日持っていった手首プロテクターの使いごこちと効果を男性介護士さんが説明してくれた。
あれこれ説明してくれたが要約すると「無いよりマシ」そんな感じだった。まあ仕方ない。
何がベストか、使ってみるまで解らないし、つけてあげる介護士さんも人によって感想が違うし、それを伝聞で聞いてネット通販で実物を見ずに購入するというのも難しい。

男性介護士さんが私が座る分の椅子を持ってきてくれて退室していったので、猫のぬいぐるみを取り出して母に見せた。
手を持ってもぞもぞ動かしてみせたり、「今日から同居人ニャ。可愛がってあげてニャ」と言ってみたりした。

それまで何の表情も浮かばなかったぼんやりしていた母の視線が、猫の顔に釘付けになった。
そして、表情自体は変わらないが、眉の辺りの筋肉がもにょもにょと動いた。
ディズニーアニメ等の海外アニメでよくみられる、眉の表現をはっきりさせて感情を示すやつみたいだ(うまく言えないが)。
表情は読み取れないが、好感触なようだ。

「きれいな猫ね」
猫から視線を外し、こっちを見た母が、わりあいにはっきりした言葉で一言だけ言った。

おお、猫って認識している。

母は猫を見つめたり、私を見てきたりしたが、座ってるのもしんどそうでだんだん目が閉じてきたから介護士さんを呼びに行った。

猫のぬいぐるみは、枕元に来るように置いた。

ベトナム人ぽい若い女性介護士さんが来て、口まわりを確認し、歯磨きをさせた。
介護士さんは片言で「噛まない」と途中で何回も言っていた。
歯ブラシを噛みたくはないが口を開け続けるのももうしんどいんだろう。

コップの水を口に含ませると、ゆすぐということも出来ない様子でただ排出する。
そんな感じのゆすぎだった。

それが終わると、介護士さんは一人で、車椅子から母を抱えてベッドに移動させた。
小柄で細めなのにすごい力持ちだ。テコのちからを利用しているのもあるだろうけど、スムーズで手早い。
脚の下などにクッションを入れて尖足や褥瘡防止の体勢にさせ、靴下を脱がせて掛布団をかけて介護士さんは退室した。

母は座っているより大分楽そうな表情になり、こちらを見ても目が閉じそうになっていたので、「また来るよ」と言って私も退室した。

ちょうど認知症サプリの通販タイミングが迫っていたので、生活相談員さんに相談した。
サプリも高価なものだし、飲ませるにも大変(食事との兼ね合いや介助時間がかかりすぎて他の事が押す)なので、サプリはやめてそのぶんマッサージの回数を多くしたほうがいいんじゃないかという提案をされた。
サプリには錠剤と顆粒があるが、今は錠剤を砕いて飲ませてもらっている(なお、錠剤の方が千円安い…)。
粉になったサプリは口の天井に貼り付いている事も多いらしく、飲ませるのが難しいらしい。

私もサプリへの信頼は「?」であるし、マッサージの方が現実的で全員の負担も違うと感じていたのでこれを機にサプリを申し込むのはやめた。
サプリは、もっと認知症が軽い頃に知ったのなら良かったと思う。