母、納棺の儀
納棺の儀は1時間くらいで終わるものらしい。
映画「おくりびと」は当時話題になり、気になってはいたが観ずじまいでそのまま本物をみることになった。
予めネットで、納棺の儀のマナー(服装)を調べると、厳密な喪服とは言わないが喪服に準じた、とあったので喪服をスーツケースに入れて、後で着替えようとわざわざ持っていった。
結果、「もうデニムとか部屋着のような普段着でも結構です」と言われてしまったが…
でもその辺は、葬儀社によって違うかもしれない。
葬儀社の納棺用の個室に通され、1日ぶりの母と対面。
おくりびとは若い女性2人と若い男性1人で、遺体を浴槽みたいな所から棺に移乗させる必要もあるから、やっぱり男性のちからが必要そうだった。
母は古式納棺なので、まず洗髪からしていく。
安らかな顔にしてもらって、もうほっかむりみたいなのはしなくても口が閉じている。
何だかただ寝ていて委ねているだけで、気持ち良さげにも見える。
これは、きちんと納棺してもらえるというのは良いものだ、と実感できた。
もう高齢で髪が薄いからか、遺体となっては必要がなくなるのか、ブローとかはない。
そっとタオルで押さえて、洗顔もした後、顔を拭くのはこちらに任された。
そっと、両頬と、額をタオルで押し当てるようにした。介護の時みたいに。
それから、お化粧をしてもらって。お望みのメイクございますかと訊かれて一瞬たじろぐと、おくりびとの女性は慣れた様子で「では自然なお化粧で」と言ってくれたので頷いた。
下地を塗り、ポイント的にカバーし、ふんわりと粉で仕上げただけ。
母はブルーベースだと思うが、見た目結構イエローベースの粉で仕上げられていた。あまり血色よくはされない(当然か)
口紅は、口のキワを濃いめのラインで引くだけのような感じで、塗ったりはしていなかった。
どうも、よく見ると、唇が内側に向けて一部白っぽくなっているというか違和感があるから、たぶん接着剤を付けられて開かないようにされていると思う。
可哀想だけど仕方ない。
旅立ちの儀とも言うらしく、昔の人の旅装束の白い版みたいな薄い和装に着替えさせられる。
男性の目があるからか見えない角度でササッといつのまにか。
重ねは生きている人と同じ右前だそうだ。
契約時に、(旅っぽい)杖や笠は必要か訊かれていたが、特別信心深いわけでもない母が望むようには思えなくて断っておいた。
父とは違い、足はわりと歩けていた高齢者だったからね。
手には数珠を持たされて、足袋を履かせるか訊かれたが、私は母の足が難しそうな形に曲がっている事を知っていたから失敗したくなくて履かせるのは断り、紐を結ぶのだけ応じた。
やっぱりおくりびとは多少の手こずりがあった。
足袋を足の甲の所で蝶結びにするのだが、私は蝶結びが上手に出来なくて片ちんばになってしまう。
介護の時にも思ったが、それまで受けてきた教育だとか、学ぶ事への好奇心、常識への対応などが、そういう節目の際に結果が示されてしまうのだと思う。
うまく蝶結びを出来なかった私が、親に見せられる私の姿なのだ。
足袋を履き終えたら、桐の箱に収められて、終わりだ。
可燃可能なものだけ、添えられる。
長谷寺のお守りと綺麗な髪ゴムだけ顔近くに収めた。
次回会えるのは明後日、葬儀の日。
その後は、練馬区役所に行き後期高齢者医療保険課と介護保険課に行き、届けを出してきた。
結果、特に記入する用紙もなく、各保険証なども「後で使う場合がありますので持っていて良いです、そして処分して構わないです」とのことだった。
介護保険課は、郵送で返却してくださいと言われたが。
後期高齢者医療保険課では、葬祭費の郵送で請求できる書類一式をもらえた。
後で、葬儀に関わる費用の領収書のコピーを添えて提出すれば、練馬区の場合7万円がもらえるらしい(他自治体は5〜7万等)。
練馬区役所には「おくやみコーナー」という、練馬区民が亡くなった場合のややこしい手続を相談するコーナーがあるので、練馬区に居た頃に作ったマイナンバーカードはどうしたら良いのか訊いたら持っていても処分しても構わないとのことだった。
別の自治体に(施設の)住民票があり、保険だけ練馬区のものを使用していることを相談すると、
今は役所同士で情報を一元化しているから、亡くなった事はすぐ共有されるので特別な申立書などの書類を提出する必要はないと言われた。住民票のある役所に出向く必要もないとのこと。
おそらくコロナもあり、人の移動もはばかられるし対面させたくない時代になったから、なるべく処理は減らすようにしたんだろう。
お陰様で、2020年の父の手続当時よりあっという間に役所での用事は終わった。
あとは銀行だな。
戸籍に死去による除籍が反映されるまで7〜10日間くらいかかるから、それからが大変そうだなというところ。
個人の過去をずっと追うとか、父の口座も凍結をしていないので父の相続の証明はどうなるのかなとか。
役所の帰りに、お寺の納骨で必要なお饅頭、お花の手配をしに行く。
お饅頭は余計な知識をネットで付けてしまったため「上用饅頭」という正式なものが必要かと思って探してしまったが、実は白いお饅頭だったら何でも良いということを後で知る…
とにかく、お寺にその饅頭を出してくれそうな和菓子屋さんを訊いて、直接お店に行ってみる。
2件紹介されたが1軒目の寛永堂は「上用饅頭は京都から取り寄せるし、消費期限が1日になりますので無理ですね」と断られる。
2軒目の新盛堂は昔ながらの職人さんがやっている所のようで、上用饅頭はどういう作りかという説明からしていただき、特別な作り方をするので5割増料金になるが作れる、というのでオーダーをお願いする。(結果、ひとつ税込400円だった)
気難しい感じの方だったが、飛び込みでしかも明後日必要のものを請けてもらえて有り難かった。
お花とお菓子の予約をするだけでこの日は夕方になってしまった。