母の死亡診断書発行、安置、葬儀社との相談

施設からは13時に来てくれれば、医師が回診で来る日でもあるのでその時に死亡診断書を作成してもらえるとの事で13時前には着くようにした。

もう今後の人生では、「遅れる」のは後悔しか起こらないと思い、どんな事でも目標の時間には遅れない事に決めたのだ。

個室はエアコンでかなり寒々として、母も触れるともう、明らかに冷たく、顔色も真っ白だった。
やっと、“ 死 ”が感じられてきた。

医師の到着までまだ時間がかかるということで、施設の退所手続と、書類受取書にサインをした。
退所手続は単に紙1枚に、何日付で誰々は退所しますと保証人サインをするだけ。
受取書類一式は、保険証関係と、病院の診察券、薬、おくすり手帳だ。

施設の事務の人が出てきて(施設の理事長の息子さん)、御香典5千円を頂戴する。
父の施設しか知らないが、施設が香典をくれるのは初めてだ。

13時40分を過ぎて、医師はダラダラと歩きながらやってきた。
別室で既に書類は記載してくれたらしく、あとは母の方に来て形式的にちょっとチェックするような感じをし、こちらに一礼して退室。
この医師は、施設専属病院の院長の息子だった。
コロナ途中くらいから、何かとこの医師の署名が混ざるようになってきて、同姓だったから院長の跡継ぎなんだろうなというのは感じていた。
常に全くこちらの目を見なかった。
もう、職場は自営で決まってるし、施設の専属でクビとか無いだろうし、安泰。一般常識も無さそう。一種異様なものを感じる医師だった。

死亡診断書が手に入り、一瞥すると、死亡時刻が13:38になっている。
昨日言われたのは明確に14:38だ。
そして移動中の私に連絡が来たのは14:10。

間に合いません、というショックを移動中の私に与えたくなかったんだろう、と好意的にとるようにする。
私も、午前中から来ても良かったのに来なかったのは私だし…今までこのケアマネさんからは、好意を感じなかったので少し引っ掛かりはするがもうやり直せないどうしようもない事なのだ。
ただ、“ 今後は時間に気をつけよう ” 教訓としてそれだけを思えばいい。

またすぐに気持ちを切り替えて、葬儀社に、診断書を受け取ったと連絡。
私が連絡次第、すぐに遺体搬送と安置に来てくれる手はずになっているので待っている間に、お寺さんに連絡。

また、火葬からすぐに埋葬する“ 直葬 ”、一日で葬儀の全てを済ませるつもりでいたので、お寺さんの都合を伺っておく。
9日の午後、11、13なら1日じゅうのどこでも、というメモを取ってから、今度は個室内の荷物の仕分けを始めた。

実家から持ってきた、古びて着古したけど気に入っていたであろう服。
使えなかったけどちょっとよそ行きのカーディガン。
入所してからほぼ歩けなかったけど、数足の靴。

実家じまいの際に、母が出かける時に使っていたであろう、大事にしまいこんでたバッグ。
中には、私が小学生の時に母の日であげた、子どもっぽいデザインの手鏡が入っていた。
いろんなものあげてきたけど、一番古くて、これだけが実家に残されていた接点。
これだけが、確かに記された愛情のような気がして、私がバッグに入れたまま施設に届けたものである。

着古した服やなんかは処分の袋に入れて、本当は処分とかやっていないけどこっそり出しておきますとかケアマネさんに言ってもらえたからお願いして。

母の個室に置いてきておいた、入所時に購入したリアルな猫のぬいぐるみが見当たらなかった。
母がかろうじて、「綺麗な猫ね」と言葉を発してくれたものだ。
かわりに個室に他人の名前が書いた子リラックマのぬいぐるみがあって、他にも他人のブランケットが来ていたり移動しまくっている模様。

猫のぬいぐるみの事を伝えると、すぐに探して他所から持ってきてくれた。
全体に埃がかぶっているが。
どこかへ移動させずに空いてるタンスにしまっておいてくれたら良かったけど、そんなに個人の持ち物の移動があるもんなんだね。
特養だし、介護を他人にしていただいている立場としては、そんな事を言ったらワガママすぎるか。

入所時のルールとしてあった、「加湿器」はたとえまだ使えたとしても残して誰かに使ってもらうわけにはいかないそうで、家宛の荷物として猫のぬいぐるみと共に詰めた。
後で着払いで発送してくれるそう。

荷物を仕分けたので、壁に貼ってある母の介護メモなど(体勢とか、仕方を介護士同士で共有するメモ)ホワイトボードにあるものをまっさらに戻したり、母の写真や敬老の日のお祝いコメント等が貼ってあったものも回収した。
これで入所当時と同じ、何もないがらんとした部屋になった。

ちょうど葬儀社の人が来た。
20代初めくらいの若い男性一人で大丈夫かと思ったが、私が個室から出させられ廊下に待機していると、少し葬儀モードでゴージャスにしてあるストレッチャーを押して出てきた。
他の入所者さんのリビングから丸見えになってしまうので、私が戸を押さえつつ身体で搬出を見えないようにして立っていたら、背後から入所者さん同士の雑談が聞こえてきた。

「亡くなったってー」
「良かったねー」

淡々として、でも朗らかな声色だった。
深い言葉であるようでもある。

施設を出る際、職員さん達が玄関口に出てきて、ワゴン車が出発する際に一礼してくれた。
こういうのも、病院で亡くなった父の場合とは違うので、色々初体験ではある。

施設から葬儀社までは1時間強ある距離で、若いスタッフさんも運転のみで退屈だろうと思い、移動中に音楽をお願いした。
「yoasobiでも何でも聞いてますので何でもどうぞ掛けてください、移動だいぶ遠いですし」と言ったら、スタッフさんは少し考え、「ではJ-POPをランダムで掛けさせていただきますね」とかけてくれた。そのスタッフの個人的趣味か、何かで配信されているリストなのかは判らない。
知っているのもあるが知らないバンドの曲もあり、リアル若い子の聞く曲が新鮮。

現地に到着し、担当が入れ替わりしながらも、したい葬儀の内容を打ち合わせていく。
結果的にいうと、やっぱり互助会会員ー葬儀社ー を使うのは、色々素早くアシストしてくれる反面、やっぱり大げさなプランを提案してくるなーという感じだった。
基本料金内で済ませれば、コストダウンもあるのだろうが、提案としては基本料金内だとこんな内容です、というのは見せて来ない。

上手なビジネスのやりかたとして「松竹梅の法則」というのがあり、3プラン用意してあげると客は必ずどれかを選んでくれる・選びやすいというのがあるが、全くもってこの葬儀というのもそのやりかただ。

大抵一番安いオプションで3万円、次に6万円、…という感じで値段がついている。
どれもざっくりキリの良い「◯万円」という単位で、いかにどんぶり勘定というか、値段を大きく大雑把につけても、葬儀という特別な場でケチる人は居ないから、誰でも応じてしまうというものだ。
そして私は母の葬儀なので尚更、ご多分に漏れない。

母の好みのパープルを中心に、装束の色を変えてもらったり骨壷のカバーの色を変えてもらったり…
直葬だから、すぐにお役御免になるとは分かっていても、そこをケチるのは違う気がして。
(だから、葬儀社もその心情をよくわかっていてビジネスするのだ)

母はこの互助会に昭和59年加入で、24万円支払い済だったが、実際葬儀社だけで(お寺関係を除外し、)総額50万強かかった。
一応ここから互助会費24万円が引かれるのでこちらからの現金支払いは、帰宅してからの振込で約28.5万。
この他、お寺さんの納骨関係で27万円近くかかる。
練馬区からは葬祭費が7万出るので、実際に現金持ち出しがあったのは48.5万(厳密にいうと、これとは別に移動費や食事振舞、火葬場で燃料費の値上がりとして調整費1万7千円などあったので約55万位になるだろう)

昭和の人の価値観で葬儀をすると、昭和の人の費用感でこうなるという例え。
うちは、親がそれを望んでいて、それに耐えうる資金をどうにか残してくれたので、望み通り遂行しただけ。
自分の時だったら、欲張ったとしても海に撒いて欲しいよ…(お金がすごくかかったり厄介ならもはやなんでもいい)

納棺の儀(8万円)、寝棺を桐にしたり(6万円)、火葬費(最上等)7.5万円というのは望んだ結果なのでともかくとして、
これとは別に謎の区分である、式典らしき式典していないけど、という式典料(5万円)とか、火葬費が昨今高いので現地でお支払いくださいとか小分けにされて色々請求される。

後で明細書を見たら、細かい額面も大きくなっていたりして何でその合計の額面になっているかも不明瞭だ。
葬儀直後で、わーっと色々あって判断つきにくい内に、設定された短い期間の間に支払わせようとしてるよね。
こういうことしているといずれこの業界に三行半突きつけられて、昔ながらの所は淘汰されるのでは?と不信に思う。

というか、母の互助会(千◯田セレモニー)より父の互助会(友の会)の方がまだ明朗だったなーと後になって思う…
それとも会社の体質じゃなくて担当者の裁量かな?

まあ以上契約内容の詳細は、終わった後に記述しているので不満ありげだが、当時は頼るしかないのでサッサと最適解と思われる契約を一人で済ませた。
本当は、こういう契約時には第三者のこちら側の目、男性の目があった方が良いのだが 急の呼び出しで夫は間に合わなかった。

お寺が納骨可能な日を聞いておいたので、その日に荼毘にふせるよう火葬場を手配してもらい葬儀は9日14時からになった。
母はそれまで安置室で安置。6日から8日までの3日間のドライアイス、1日あたり1万円で合計3万円だそうです。

お葬式の日までに、納棺の儀というのが前々日(つまり明日)ある。
おくりびとが納棺してくれるというもので、現代は入浴をさせるようだが、母が介護の際に相当入浴を嫌がった事を思い出して、ましてや禄に知りもしない他人や男性の中で入浴させられるのは嫌だろうと思い、洗髪はするが身体は清拭するだけの古式納棺というのを選んでいた。
葬式の日まで間2日あるが、内1日は母に会えるからいいとして、こちらに滞在している間ならではの用件を済ませないといけない。

お寺にもすぐ電話して、必要なものを父の時のメモを取り出してすり合わせ。
浄土真宗式なので、白いお饅頭8個、お菓子8個、本堂用の長めのお花、お墓用のお花。石屋さんの納骨作業費3万3千円。

諸々決まり、夕方暗くなり始めてから長距離を移動して、義実家に戻った。気疲れ・体力疲れがひどすぎる1日だった。

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